あの日、大阪から東京へ向かった一人の大学院生が、新卒から取締役に就任するまで

あの日、大阪から東京へ向かった一人の大学院生が、新卒から取締役に就任するまで

Brave groupおよびグループ会社において唯一、新卒入社から取締役に抜擢された山本 瑶司は、大学院生時代に送った一通のDMを機にesports運営の世界へ。その後、大学院を中退して「ぶいすぽっ!」を擁する株式会社バーチャルエンターテイメントへ入社。わずか1年9ヶ月で取締役に就任しました。
研究職の道もあった中、「好きなことに全力で取り組みたい」と決断した彼が、いかにキャリアを切り拓いてきたのか。その裏側にある「決断」と「行動」について、Brave group 代表取締役CEOの野口 圭登と共に振り返ってもらいました。

Brave group 代表取締役CEO

野口 圭登

2011年の在学中に株式会社Vapesを創業。2016年に同社を株式会社ベネッセホールディングスへ事業譲渡し、50社以上のスタートアップへのエンジェル投資、共同創業を経て、2020年に株式会社Brave group代表取締役に就任(現任)。

株式会社バーチャルエンターテイメント 取締役
株式会社Neo-Porte 社外取締役

山本 瑶司

大阪大学情報科学研究科 修士課程修了。在学中より当時のesportsシーンでは最大規模であった、PUBGの練習試合の管理運営に参画。2021年1月より株式会社バーチャルエンターテイメントに入社し、esports公式大会の運営・配信制作補助システムの構築に携わる他、海外コミュニティを巻き込んだ大会を立ち上げから実施まで一貫してプロデュースするなど、コミュニティの形成に多岐に渡り貢献。現在はesports事業のみならず、IP事業の推進サポート、教育事業をはじめとする新規事業開発も担当。2022年10月、同社の取締役に就任。2025年2月より株式会社Neo-Porteの社外取締役も兼任(現任)。

「運営を手伝わせてほしい」。面識のない相手に送った一通のDM

野口:まずは、バーチャルエンターテイメント創業者の星さんとの出会いについて聞かせてください。

山本:大学院での研究の傍ら、ボランティアとしてバトルロイヤルゲーム『PUBG』の練習試合(スクリム)を運営するコミュニティに関わっていました。そのコミュニティが事業買収されることになり、買収先の責任者として紹介されたのが星さんでした。

野口:そもそも、なぜそのコミュニティに参加しようと思ったのですか。

山本:仲の良い友人が『PUBG』のプロゲーマーになり、スクリムに参加し始めたことがきっかけです。友人が活躍しているのに、自分だけ何もできていない状況が悔しくて。ただ、自分にはプロになれるほどの実力はなかったので「運営として手伝わせてほしい」と、当時の運営責任者へ直接DMを送りました。

野口:全く面識がない相手に、いきなりDMを?すごい行動力ですね。

山本:はい。今振り返ると、あの時は不思議なくらい行動力がありました(笑)。

「今、好きなことに全力で」。大学院中退を決めた1週間の旅

野口:飛び級で大学院に進み、研究職を目指していた山本さんが、なぜバーチャルエンターテイメントへの入社を決意したのでしょうか。

山本:コミュニティの運営を続けていた中で、星さんからは何度か入社の誘いを受けていました。ですが、当時はまだ大学院に在籍していて、将来を決めかねていたんです。

そんな中、色々なことが重なって、精神的な負荷を強く感じるようになりました。進路に悩んだ末、2020年10月に1週間ほど大阪から東京へ向かい、これまで関わってきた方々と会う時間を作りました。

そこで再会した友人や知人は、みんな好きなことに全力で取り組んでいて、本当に楽しそうだったんです。その姿を見て、「自分も今、好きなことに全力で取り組みたい」という思いが固まりました。旅の最後に星さんともお会いし、大学院を辞める決意とともに「入社したいです」と伝えました。

野口:そこも山本さんからのアプローチだったのですね。どちらかというと “受け手” の印象があったので、意外な一面でした。

山本:普段は慎重に立ち回るタイプなのですが、ここぞという転機では、自分から動いてきたように思います。

「呼ばれてないのに現場へ」。役員への道が拓けた、神田明神の夜

野口:山本さんはグループで唯一、新卒入社から取締役に抜擢されていますが、キャリアアップへの強い希望は当初からあったのですか。

山本:実は、Brave groupとバーチャルエンターテイメントが経営統合する以前から、星さんに「将来的に役員になるのはどう?」と声をかけていただいていました。ただ、新卒で入社したばかりだったので、正直「なれるわけがない」と思っていたんです。

野口:その意識が変わったきっかけは何だったのでしょう。

山本:2022年8月の『ぶいすぽっ!× 神田明神納涼祭り』が大きな転機になりました。ぶいすぽっ!初のオフラインイベントということもあり、現場では予期せぬトラブルが続いていたんです。一方、僕は別会場でesports大会の運営にあたっていました。大会終了後、SNSで状況を知って「自分の経験を活かせば解決できるかもしれない」と思い、すぐに現場へ向かいました。

野口:連絡があったわけではなく、自主的に向かったのですね。

山本:はい。当時はまだ「ぶいすぽっ!」の運営には関わっていませんでしたが、「この方法で解決できる」という確信がありました。アイデアを伝えに行ったら、そのまま一緒に対応することになり、乗り越えることができました。
その時に初めて手応えを感じて、「役員に挑戦してもいいのかもしれない」と思えたんです。

野口:その経験が自信に繋がったと。

山本:それもありますが、本質的に星さんと対等な視点で議論できることが、純粋に楽しかったんです。未経験のIP事業でも、星さんと一緒に進めていけるなら、ぜひやってみたい。そう思えたことが、本格的に「ぶいすぽっ!」の運営に参加するきっかけになりました。

野口:「何をやるか」よりも「誰とやるか」を重視しているんですね。

山本:そうですね。新卒で入社して、直属の上司が星さんしかいないという環境だったので、事業に対する向き合い方など、すべて星さんの背中を見て学んできました。

0→1の壁を越える「失敗を恐れない」決断

野口:僕らが初めて腰を据えて話したのは2022年秋ごろでした。星さんから「山本さんを取締役に推薦したい」と相談を受け、面談をすることになった時ですね。

山本:当時から野口さんには、柔和な印象の裏に底知れないシビアさを感じていたので、「気合いを入れて臨まないとな」と思ったのを覚えています(笑)。

野口:僕は山本さんに対して、「右脳と左脳のバランスが非常に良い人」という印象を持っています。ファンやプレイヤーとしての「感覚(右脳)」を持ちつつ、物事を極めて合理的に捉えられる「地頭の良さ(左脳)」も備えている。

この業界では “天才の感性” が注目されがちですが、それを「事業」として執行する段階では、緻密な事業計画やオペレーション、組織マネジメントが不可欠です。山本さんはその両方を備えた、総合力の高い人材だと思っています。

それに、山本さんは課題解決能力が非常に高い。意思決定をする場面では、常に的確で、スピード感も素晴らしい。

山本:ありがとうございます。ただ、新しいものを創り出す「0→1」については、まだ苦手意識があります。星さんの「ひらめき」を間近で見ていると、自分はまだまだだな、と。

野口:事業における「0→1」の創出は、訓練で培えるものだと考えています。最初から独創的である必要はなく、優れた事例を徹底的に吸収して実践することから始めれば良い。「模倣」から始めて、そこにオリジナリティを加えていくことで、いずれ「ひらめき」は開花していくんです。

『GOOD IMITATION to GREAT INNOVATION』という本がありますが、優れた事業家は優れた模倣家でもあります。Facebookは最初のSNSではありませんし、Googleも18番目の検索エンジンでした。発明する人と、それを大きく育てる人は、必ずしもイコールではないですから。

山本:そうですね。これまでは、星さんのアイデアを形にすることが多く、自分の成功体験が少ないせいだと思っていました。ですが最近、本質的な原因は「自分自身が失敗を恐れていたこと」にあると気づいたんです。

そこから「失敗からも得られるものは必ずある」と割り切って行動するようになり、今では現場でも自信を持って意見を言える場面が増え、手応えを感じています。

意思決定を「執行」する立場から、自らが「判断」する立場へ

野口:2025年2月から株式会社Neo-Porteの社外取締役も兼任されていますが、打診を受けた際の心境はいかがでしたか?

山本:ある種の使命感がありました。Brave groupが目指す「VTuber企業の連合軍」にとって、「Neo-Porte」は非常に重要なピースになる。絶対に成功させるべきだと思ったので、即答で「やります」とお伝えしました。

野口:Neo-Porteでの役割は、これまでとは異なる挑戦になっていますね。

山本:はい。これまでは星さんの意思決定を執行する役割が中心でしたが、Neo-Porteでは僕や若松さん(現 Neo-Porte 取締役)が基本的に意思決定をしていく立場です。

野口:全てを自分一人で抱え込んで処理していては、組織は育ちません。自分の分身を作ったり、誰かに任せたり、選択と集中をしたりすることが、次のステージでは重要になってきますね。

山本:そうですね。実は昨年11月に開催した『ぶいすぽっ!フェス 2025』では、僕はイベント内容にほとんど口出しをしていないんです。これまでは僕が舵取りをする場面も多かったんですが、「ぶいすぽっ!」の拡大に合わせて組織も次のフェーズへ進むべきだと感じて。今回はあえて一歩引き、現場を信じて託すことにしました。

その結果、企画や演出は全て現場スタッフとぶいすぽっ!メンバーが形にしてくれました。僕が頭を捻らなくても、これだけのものを創り上げられる組織になったんです。その成長が何よりありがたく、感慨深かったです。

野口:まさにタレントの皆さんや運営メンバーたちの「努力の結晶」でしたね。
僕も現地へ行きましたが、ファンの皆さんの熱狂度合いが本当に凄まじかった。
ゲームイベントでは何万人もの観客が、タレントの皆さんのプレイの一挙手一投足に反応し、会場全体が一体となって歓声をあげていました。ライブイベントでは、冒頭のMCが「星さん※」だと分かった瞬間に会場が沸いていて、「これはすごい」と。
会場の端っこで、僕や舩橋さん(現Brave group 取締役 専務執行役員 COO)、下村さん(現Brave group 取締役 常務執行役員 CSO)もペンライトを振っていましたよ(笑)。

※星さん:「ぶいすぽっ!」プロジェクトでは「ぶいすぽ運営」としてファンから親しまれている。

山本:本当にあれは凄かったですね。

野口:山本さん自身も今回、「任せる」という新しい挑戦をされましたが、経営やキャリアは「筋トレ」のようなもので、負荷をかけて固定観念を一度壊さないとキャパシティは広がりません。トラブルを乗り越えるたびに、扱える重量が増えていくものです。
その負荷を力に変えて、経営者としてさらにパワーアップされることを期待しています。

無理に挑戦しなくていい。でも「やりたい」なら動くべき

野口:最後に、キャリアや挑戦について悩んでいる方へメッセージをお願いします。

山本:そうですね。あえて “逆張り” なことを申し上げると、「挑戦しなければならない」という義務感だけで動くのは違うと思っています。人生の主語は、あくまで自分にあるべきです。「やりたい」という気持ちがあるけれど不安な方は、ぜひ踏み出してみてほしい。一方で、本心から望んでいないのであれば、無理にやる必要はないと思います。

その上で、「ぶいすぽっ!」や「Neo-Porte」というプロジェクトを通して何かを成し遂げたいという強い意志があるメンバーには、どんどん突き抜けていってほしい。僕自身も刺激を受けながら、共に成長していける仲間が増えたら嬉しいですね。
また、人生の大半を占める仕事の時間を考えれば、受け身で過ごすのは非常にもったいない。同じ時間を使うのであれば、今後の自分の人生につながることに費やすのが良いのではないでしょうか。

野口:これからのBrave groupには、山本さんのような「若い世代のベンチャースピリット」がより一層求められます。10年後、20年後のBrave groupを考えると、経営を担うべきは、感覚の鋭い若い世代だと思いますから。
山本さんにはその中心に立ち、未来のBrave groupを背負う模範となってくれることを期待しています。

(取材日:2025年12月4日)

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