「僕自身は特別なスキルがあるわけでも、豊富な業界経験があるわけでもない」と語るのは、株式会社ENILIS 取締役の菅野一成。それでも入社数ヶ月でグループ会社の立ち上げに携わり、1年余りで取締役に就任。その後も新規事業やM&Aを先導し、2025年10月にはIP Production統括管理補佐を兼務するに至りました。
謙虚でありながら、着実に組織を動かし続ける菅野の経営スタイルとは──。当社 代表取締役CEOの野口圭登と共に語ってもらいました。

Brave group 代表取締役CEO
野口 圭登(@keito_noguchi)
2011年の在学中に株式会社Vapesを創業。2016年に同社を株式会社ベネッセホールディングスへ事業譲渡し、50社以上のスタートアップへのエンジェル投資、共同創業を経て、2020年に株式会社Brave group代表取締役に就任(現任)。

株式会社ENILIS 取締役
菅野 一成(@sugeno0728)
学生時に飲食事業を展開する企業にて飲食事業の国内外店舗立ち上げを経験。新卒で大手エンタメ企業に入社し、新規事業の企画および立ち上げ等を幅広く担当。その後、フードテックベンチャーに転職。PR・マーケティング責任者を経験した後、自身で海外アパレルEC事業を運営する会社を設立。事業売却の後、2023年1月に株式会社バーチャルエンターテイメントに入社。同年4月に株式会社ENILISの設立に併せて転籍し、部長として新規事業企画および事業推進を担当。2024年4月に取締役に就任。2025年10月よりIP Production 統括管理補佐を兼務(現任)。
起業を経て、次の挑戦へ
野口:ENILISを立ち上げる前は、グループ会社のバーチャルエンターテイメントに在籍していましたよね。改めて、入社経緯から伺えますか?

菅野:自身で経営していた会社に区切りがつき、次の挑戦を探していたところバーチャルエンターテイメントの求人に辿り着きました。
当時は実家の家業を手伝うか、もう一度キャリアを積むかで悩んでいました。そんな折、知人から「VTuber業界はどう?」と勧められて。
もう一度キャリアを積むなら大きなことに関わりたいという軸があったので、業界内でIPO(上場)に最も近い会社を探したところ「ぶいすぽっ!」の名前が出てきて、「この会社だ」と思って応募しました。
野口:最初は新規事業開発部の所属だったと思いますが、入社後に何をやるかは決まっていたんですか?
菅野:それが入社初日に星さん(現取締役 専務執行役員 CINO)から「VLiver事業のPLをたたいて」とだけ伝えられて。
市場リサーチから始め、「ENILIS VLiver Project」の前身となる「HareVare」の事業計画を作ったのが一番最初で、正式に事業化が決まるまでの間に「ゆにれいど!」などのVTuberプロジェクトの事業計画も並行して作っていました。
野口:それで2023年4月にENILISを立ち上げて、VLiver事業を皮切りにVTuber事業などの新規事業も一気にスタートさせていったんですね。
菅野:はい。気がつけば、あれからもう3年が経ちました。
野口:菅野さんはENILIS立ち上げ後も、brossomとの経営統合やMateRealも含めての吸収合併、事業の立ち上げからM&A、PMIに至るまで幅広く先導してくれています。
星さんからも「これからも色々なことを任せていきたい」と聞いているし、僕もそう思っています。
適性・キャリア・会社の成長がリンクした抜擢
野口:2025年10月からIP Production 統括管理補佐を兼務いただくことになりましたが、打診を受けたときの心境はどうでしたか?
菅野:正直、「今か」という気持ちはありました。
自分の中ではまだ定量的な結果が積み上がりきっていないし、統括のポジションは「全員が見たときに、その人がそこにいることへの納得感や安心感」がとても大切だと思っていたので。
このタイミングでの就任には一考の余地がありましたが、野口さんから任せたいという意図を伺い、そう言っていただけるのならと即決しました。

野口:今期のスローガンに『団結』を掲げる中で、IP Productionではノウハウの共有をはじめ、さらなる連携やグループ横断での取り組みが必要だと感じていました。そんな中、各所の連携を推進していくための適任者として名前が挙がったのが “菅野さん” だったんです。
どれだけ抜擢された人が「やろう」と言っても、周りが動いてくれなければ横断の取り組みは進みません。菅野さんは抜擢以前から各所のプロデューサーと日常的にコミュニケーションを取り、ENILIS以外のプロジェクトの特性もしっかりと把握していた。そうして積み上げてきた各所からの信頼があったからこそ、このポジションを任せられると思いました。
また、抜擢にあたっては本人の適性と今後のキャリア、Brave groupの成長がリンクする配置であることを重視しています。菅野さんはジェネラリスト的に幅広く経営に携わるほうが力を発揮できると感じていたので、今回の役割はぴったりはまると思いました。
自分の役割はBrave groupとグループ会社、双方の視点をマージすること
野口:経営者にはカリスマ性で牽引するタイプや、圧倒的な仕事量で細部まで拾い切るタイプなど、リーダーシップひとつ取っても様々なタイプがいます。その中で、菅野さんと僕はスキルの違いはあれど、タイプが近しいと感じています。
菅野:おこがましいながらも、それは僕も感じていて。細部への目の通し方やコミュニケーションの質はまだまだ及びませんが、意思決定の進め方や重視するポイントが野口さんと重なる部分が多い。経営者のロールモデルとして、野口さんのことを自分の上位互換だと思っています。
野口:各子会社にはスタープレイヤーやスタープロデューサーなど、ある種の “天才たち” が多く在籍しているので、その天才たちを縁の下でサポートしながら各所の意見を聞き、グループ全体をまとめあげていく。それがBrave groupの経営スタイルです。
IP Production 統括管理のポジションも同様に、時にリーダーシップを発揮し、時にプロダクション側を立てながら、持ち前のバランス感覚で判断していく。菅野さんにはその適性があると感じています。
菅野:IP Production 統括管理における自分の役割は、Brave groupとグループ会社、双方の視点をマージすることだと思っています。両者が必ずしも同じ視座を持っているとは限らない。それでも、Brave allで団結していくための着地点を丁寧に探す作業は、常に気を配っていますね。
野口:そこが本当に難しい部分なんですよね。Brave groupを主語にしたり、グループ会社を主語にしたりと、常に視点を行き来しなければならない。様々な立場の気持ちを汲み取りながら思考できるのは、ある種の特技と言えるレベルです。
しかも、そこが得意であっても、双方の言い分に挟まれて中途半端な立ち回りになって潰れてしまうこともある。だから最終的な意思決定は、双方にとって最善の「一点」でなければならない。いわゆる中間管理職の難しさですが、その難易度の高いポジションを菅野さんに任せています。
ちなみに、双方の意見に挟まれる時、意思決定の最後の一歩を踏み切る上で基準にしていることはありますか?

菅野:意思決定の判断基準はその状況によって異なるのですが、最後の一歩を踏み出した後、そこに “着地させる” ためのコミュニケーションはとても大切にしています。
役員陣と話すのはもちろん、各所の担当者への説明や日々の会話を重ねながら、自分が意思決定した方向にきちんと辿り着けるよう動いています。
IP Production 統括管理補佐に就任してから3ヶ月ほどですが、その積み重ねの中で少しずつ手応えも感じてきています。
野口:僕から見ても、着実に視座が高まっていると感じています。
菅野:僕の中では特に、今まで見えていなかった意思決定や思考のプロセスにアクセスできる状態になったのが本当にありがたくて。
景色が広がったことで、意思決定の解像度が明らかに上がってきた感覚があります。そこは今の自分にとって大きな成長だと感じています。
目標はシンプルに「やれることは、全部やる」
野口:改めて、3年後、5年後を見据えて、何か掲げている目標はありますか?
菅野:シンプルに「やれることは、全部やる」ということだけです。ENILISとIP Productionの両方において、売上・利益・組織の最大化を図るのが僕の仕事なので。
加えて、Brave groupの上場とその先を見据えて、後任育成を含めた組織づくりには力を入れていきたいと思っています。

野口:Brave group全体としては、まだまだ同業他社と比べると道半ばで、当面は成長軌道に乗っているプロジェクトをさらに伸ばしながら、シード期のプロジェクトも横断企画などで成長させていく作業になると思います。
上場後はM&Aも活発になるかもしれないし、新規事業も続けて推進していく中で、菅野さんにお願いしたいことが必ず出てくる。そうなった時にENILISの経営やIP Production統括管理での役割を誰かに託せるよう、人材育成や抜擢を今から着実に進めておけると良いですね。
周りを巻き込む意識が、組織と自分を強くする
野口:最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします。

菅野:起業や新規事業の立ち上げでは、苦しい局面がどこだったのか思い出せないくらい、日々新たなトラブルや障壁に見舞われます。それでも乗り越えてこられているのは、周囲のチームメンバーの存在が何よりも大きい。
僕自身は特別なスキルがあるわけでも、豊富な業界経験があるわけでもないので、一人でできることの限界ラインは正直めちゃくちゃ低いんです。でも周りのメンバーはそれぞれのスキルや考え方を持っている方ばかりなので、常に助けてもらいながら走っています。
結局、リソースが有限な以上、人間が一人でできることは、たかが知れています。自分の意見を持ち主体的に動くことはもちろん大切ですが、各所と積極的かつ丁寧なコミュニケーションをとりながら、周りを巻き込む意識を持つことがとても大切だと感じています。リスペクトを基盤としたコミュニケーションを大切にしながら、今期のスローガン「団結」を全員で体現できれば嬉しいですね。
また、規模が拡大しているプロジェクトもあれば、まだシード期のプロジェクトもある中で、たくさんの方に応援していただいています。どれだけファンのみなさんに還元できるか。どこまで行ってもそこを重視してやっていきたいです。
野口:思うようにいかない時期も経験しながら、菅野さんはコツコツと積み上げてきた。あとは結果がついてくるだけだと思うので、引き続き頑張ってほしいですね。
菅野:しっかり期待に応えられるよう、頑張ります。
(取材日:2026年2月12日)